先日、とある大学の就職説明会に行って来ました。今回はどちらかというと、慢性人材不足に悩む看護部のお伴、という役割で参加させていただきましたが、学生に会っているうちに、いくつか気付いたことがあります。
もったいない
「もったいない・・・・」。これが、率直な感想です。「私だって学生の時は右も左も分からずに、きっと同じような態度しかとれなかっただろう」とは思うものの、それでもこれだけ情報が容易に手に入り、1年時から就職ガイダンスまでしている大学もある、と聞いているのに、今でも学生は手に入れたい情報を、手に入れられるはずの機会から、ほとんど手に入れていないのではないか、とそんな風に感じたからです。
例えば、「一つお聞きして宜しいですか」と積極的にテーブルにつくだけで、ホームページやパンフレットには載っていない生の情報を、対面で得ることができます。説明者がリハビリ部門以外の人ならば、少し打ち解けた段階で「ところでこちらでの、リハビリ部門の評判はいかがですか」などとさりげなく聞いてみます。この時、もちろんネガティブな応答はないだろう、と予想できますが、それでも言外の(非言語的な)反応には、相当量の情報が含まれている可能性がありますので、少し高度なスキルですが、試してみる価値は十分にあります。聞かれる側にとっても、応募者が気にして当然の質問、という認識はありますし、逆にそれで身構えるようでしたら、何か理由があるはずです。しかも採用面接ではありませんからそれほど緊張もしなくてすみますし、採用者側とダイレクトにコミュニケーションを取るトレーニングにもなります。
ここで大切なことは、給与の額や休暇の日数、どんな患者さんを担当するのか、その人数は何人?というよくある質問以外に、知っておく必要がある情報を事前につかむ、ことです。自分が関心を持ったリハビリ部門が院内・施設内でどのような位置を占め、実績はどのくらいで、周囲との関係性は良好なのか、は現場で働くスタッフにとって、とても大切なポイントです。フリーに出入りができ、対面でコミュニケーションが取れる就職説明会だからこそ入手可能な情報ですので、是非有効に活用していただけたら、と思っています。
見学の時によくある質問
先輩たちが職場を見学する時に、よくしている質問をいくつか挙げますと、
・スタッフは何人ですか(これは、説明会でも聞かれました)。
・スタッフの経験年数は、どのくらいですか。
・学会や院外への勉強会には、参加できますか。
・新人教育プログラムはありますか。
・科内での勉強会は、どんな風に行っていますか。
・一日にどのくらい患者さんを担当しますか。
・残業は、何時くらいまでかかりますか。
・どんな疾患が、多いですか。
・こちらは、どんなタイプの病院ですか。
・有給休暇はどのくらい取れますか。
質問からは、「自分のスキルアップが、ここで図れるだろうか」ということについての関心がかなり高いことが伺われます。また、地域性があるのかもしれませんが、最初の職場で定着する、というよりは、ステップアップのための第1段階、ととらえている人の割合が、多いという印象を受けました。これらは、見学まで待たなくとも、就職説明会に現場のスタッフが来ていればすぐに尋ねられることですし、他の人と自分の関心事にそれほど差がないことを知るためにも参考になります。あるいは、就職ガイダンスでも指導されている内容かもしれませんが、今回の説明会ではそのような質問があまりありませんでしたので、一応まとめました。できれば、もう少し変わった(あなたでなければできない)質問を一つ、二つ入れていただくと、もっと色々な情報が引き出せる、と思います。
就職説明会でのペース配分と質問メモ
質問メモを準備するかしないか、は人によって様々ですが、ここに就職活動に取り組む姿勢の個人差が現れます(と、採用者側は判断します)。何故なら質問メモは、自分が説明会に参加する目的を明確にして、つかみたい情報を予め整理しなければ、準備できないものだからです。また、たとえ一つのテーブルで説明を受ける時間が10分でも、その場で質問を考えるのとメモを作っておくのとでは、収集する情報量が格段に違います。説明者は、自分の答えたいことに時間をかける傾向がありますから、1つの質問だけで、5分10分があっという間に終わってしまうことがよくあります。説明を受ける時に、「10分ほどお時間をいただいて、5つほどお聞きしたいことがあるのですが」と前置きをしてから質問に入れば、ある程度自分のペースで情報を収集することができます。この時、説明者には「十分自分の話したいことを話せた」と思ってもらえるように(コントロール感を持ってもらえるように)、アイコンタクトをとり、感じのいいあいづちを返します。この機会は、採用面接のリハーサルとしても活用することが可能です。本番の採用面接では、時には戦略的にプレッシャーをかけられる(圧迫面接)こともありますから、採用者側とのコミュニケーショントレーニングは、多い方がいいでしょう。学内のロールプレイでは経験のできない臨場感を味わうことができます。
久しぶりに参加した就職説明会は、学生・参加者双方にとって、ほどよくリラックスしながら情報交換ができる良い機会、だと改めて思いました。一方、同じ大学でも学部によって、「買い手市場」と「売り手市場」の明暗がくっきりと分かれる、というシビアさを目の当たりにすることにもなりました。その中でも就職難に苦しむ学生の本気度は確かに伝わってきましたし、その誠実な態度には、好感が持てました。きっとどこかで報われるだろう、と期待しています。
みなさんに、良い機会と出会いがありますように。