2013年3月24日日曜日

コーチングでコミュニケーション能力を上げる








1、 説明が難しい「コミュニケーション」     

 

 「コミュニケーション」という言葉は、毎日目や耳に入ってきます。それだけ重要で必要性の高いものだ、ということも分かっています。にもかかわらず、改めて「コミュニケーションとは?」と自分に問いかけてみると、スマートな答えが出てこない。それほど、コミュニケーションの定義は幅が広く、解釈も様々で多様な使われ方をしているのです。たぶん、あなたの使っている「コミュニケーション」の意味と私のそれは、同じではないでしょう。たとえば、同じキィワードを聞いて描かれた絵に、二つと同じものがないように。その上、このことは案外意識化されていないのです。

 

 

2、重視されている「コミュニケーション能力」

   

 採用時に企業が最も重視するのが、「コミュニケーション能力」です。定義があいまいなだけに、「コミュニケーション能力」にどんなものが含まれているのか、についてはずい分幅がありそうですが、それにしても長期間(経団連アンケート・9年連続)にわたる「第1位」にはそれなりの理由があるはずです。

 

 

3、新人の課題第1位は、「コミュニケーション」

 

 ところでこれだけ重視されているのですから、正規採用に辿り着くのはコミュニケーション能力で評価されている人たちのはずですが、それでも苦労している実態があります。某グループ病院が採用半年後に行った新人コメディカル研修会では、全国から寄せられた事前アンケートの7割近くに、「コミュニケーションが課題」と書かれていました。たとえば、上司との関係が上手くいかない、言われていることが理解できない(納得がいかないことも含む)、言いたいことが伝えられない、など。まだ本格的なクレームに直面しているわけではなく、医療に特化した課題というよりは、どの業種でも見受けられるような課題がほとんどです。

 

 

4、職業能力の構造

 

 コミュニケーション能力は、職業能力で最も必要とされているものです。職業能力には、「専門力」と「基礎力」があり、コミュニケーション能力は「基礎力」に含まれます。基礎力は、どのような仕事にも必要となるもので、「対人能力」「対自己能力」「対課題能力」を主要な3要素としています。

 

 

5、対人能力

 

 基礎力の中でも「対人能力」は、特に「コミュニケーション能力」との関連が深い。ここでは、対人能力を更に3要素(親和力、協働力、統率力)に分類します。

 

 親和力とは、親しみやすさや共感、人脈形成、信頼構築(ラポール形成)を意味する能力。ノンバーバルレベルのコミュニケーション能力が高い人は、この親和力に長けています。例えば、柔らかいアイコンタクトを取りながら「挨拶」をして、人の話を頷きながら聞ける人は、仕事をする上での大切な能力を持ち合わせていることになります。「そんな、簡単なこと」と思うかもしれませんが、その簡単なことの価値を再認識しましょう。

 

 協働力は、目標に向かって他者と協力しながら仕事を進める能力。チーム医療に欠かせないのはもちろんのことですが、その他の業種でも、ほとんどの仕事は協働で成り立っています。これも座学ではなく、協働作業の経験を重ねることによって、少しずつ身についてきます。社会経験が浅いうちは、「そんな方法は、納得がいきません」と言う前に、「ひとまず自分の感情を脇に置いておいて」というストレスマネージメントが求められます(これが難しい人、いますね)。また、リーダーシップを取る立場であれば、メンバーを「承認」して動機づける能力が必要になります。

 

 統率力では、「何をどう話して、相手を動かしていくか」ということに関心が向きますが、
ここで大切なのは「場を読み、組織を動かす」ことなので、話すこと以上に「聴く(傾聴)力」が求められます。考えてみると、話しやすい人にはついていきたいが、頭ごなしに命令する人からはできるだけ距離を取りたくなるのは自然のこと。これでは、統率はできません。相手の話を聞く人は、ラポールを形成しペースを合わせる(ペーシング)能力が大事になります。

 

 

6、基礎力の価値

 

 育成目標に「採用から3年間の初期キャリアの内に、基礎力を徹底的に鍛えること」を掲げている企業も多いそうです。それほど、基礎力が重視されている。また、基礎力と専門力が給与所得に与える影響を調べてみると、基礎力の方に軍配があがり、その中の「対人能力」だけで比較しても、専門力を上回る年収影響があることが分かりました(もっともこれは、医療従事者には当てはまらないかもしれませんが)。

 

 では、どのようにして対人能力を始めとする「基礎力」を鍛えるか、についてお話を進めます。

 

 

7、コミュニケーション能力を上げるためのコーチング

 

 言うまでもなく、企業が採用時にコミュニケーション能力を最重視するのは、このスキルが基礎力全般、中でも対人能力に深く関わっているからです。つまり、コミュニケーション能力が基礎力のかなりの部分をカバーする、と考えられているのです。

 

 コミュニケーション能力開発の講座や書籍は沢山出ていますので、自分に馴染みやすいものを選択すればいいでしょう。これでなければ、というほど差別化されたものはむしろ少ないのではないか、と思います。どのコースから登っても、ゴールはそれほど変わらない(…言い過ぎ?)。

 

 その前提の上で、私は若いうちにコーチングを知ってもらいたい、と思っています。理由は第1に、コーチングがコミュニケーションの一種であり、構造がシンプルで分かりやすいこと。つかみどころのない「コミュニケーション能力」を、具体的にイメージすることができます。第2の理由は、基礎力全般を網羅していること。中でも対人関係能力を伸ばすことに優れていること。この文章をまとめている段階で、対人関係能力の3要素(親和力、協働力、統率力)が全てコーチングを学び実践する中で伸ばせることに気がつき、嬉しくなりました。

 

 コーチングの学習は、①理論を学ぶ、②コーチングを実践する、③コーチングを受ける、によって構成されています。コーチングを学びながら基礎力を上げ、より効果的に専門性を発揮出来たら、と思っていますし、多くの人が関心をもってくださり、身近なところで学び合える環境が整うことを、期待しています。

 

 最後に、私たちの仕事では、コミュニケーション能力が基礎力であるとともに専門力でもあることを忘れずに。

 

追記:分かりにくい文章かもしれない、と思って頑張って図表を作りましたが、ブログに転記できませんでした(残念!)。どなたか、良い方法がありましたら、教えて下さいませんか。


<参考文献>

大久保幸夫 キャリアデザイン入門 [Ⅰ]基礎力編 [書籍]. - [出版地不明] : 日本経済新聞社, 2006.

大久保幸夫 キャリアデザイン入門[Ⅱ] 専門力編 [書籍]. - [出版地不明] : 日本経済新聞社, 2011.
 

大久保幸夫 30歳から成長する!「基礎力」の磨き方 [書籍]. - [出版地不明] : PHPビジネス新書, 2012.