2013年5月5日日曜日

私たちの「コミュニケーションスキル」


 先日、セミナーでランチを御一緒させていただいた外資系企業の方から、こんなことを伺いました。

 

 「中川さん、日本は中国に追い越されます。中国人のハングリー精神はすごいです。それに比べて日本人は、今の生活に満足している。目標を持っていない」。

 

 この方は台湾出身のチャーミングな女性で、日本支社の社長をしています。この日は、中国への出張を終えて日本に戻ってきたばかりでしたので、よけいに中国の印象が鮮明だったのかもしれません。もう一つ、こんなことも話していました。

 

 「台湾でも外国人介護職を受け入れていますが、彼らの仕事のレベルはとても高く、評判が良いです」(ここでいう外国人介護職とは、フィリピンの人のことを言っているようです)。病院の中では普段聞けないお話でしたので、とても興味深く伺いました。

 

 日本でも、高齢者が増え若者の労働人口が減少しつづけています。都心では、日本人以外の人たちを見かけることが日常的になってきました。今後は更に、医療や介護の分野にも、外国の人が参入してくるでしょう。ランチをいただきながら、「その時には、どんな人が、その人たちに仕事を教えたり指導したりするのだろう」と考えました。看護の世界ではもうスタートしていることです。外国人介護職の指導・育成に、日本人の介護職やリハビリテーションのスタッフが関与する日も、遠からず訪れることでしょう(すでに、スタートしているかもしれません)。

 

 外国の人が日本で働くための参入障壁で最も大きいのは、「言葉」の課題だと言われています。特に医療・介護の分野では、「クライアントとのコミュニケーションがスムーズであること」が求められますし。

 

 

この時私は、全く別のことを思いつきました。それは、「日本語ができなくても、コミュニケーションはとれるかもしれない」。なぜなら、「クライアントに向き合った時、サービスの質を左右するのは、ノンバーバルコミュニケーション」だと思っていたからです。たとえば、こんなことがありました。車いすに乗ったクライアントを、病室に送っていた時のこと。わずかな段差の前で、私はごく自然に車いすを押すスピードを落としました。すると、その人は「まぁ、まぁ、すみませんね。気を使っていただいて」とお礼を言って下さったのです。認知症が進み、自分の年齢も、今いる場所も、時には息子の顔さえ見分けのつかない人が、(後ろから車いすを押していたので)姿も見えないはずの私の、ごくさりげない配慮をこれほど敏感に察知してくれたことに、つくづく驚き感激しました。言葉でも語調でも見た目でもない情報が、しかも、いわゆる認知症の方にこれほどビビットに伝わるなら、評価の高い外国人介護職の人が日本で働くことは、それほど非現実的なことではないかもしれない、と思ったのです。

 

 リーダーシップや自己啓発本で、「コミュニケーション」という文字が見当たらないものはありません。コミュニケーションの定義は幅が広く色々な捉え方ができますが、あらゆる分野で、「言葉」だけではないコミュニケーションスキルが求められています。もちろん、医療・介護の分野でも。

 

 

 今30歳前後の人たちが、40代前半になるころに2025年がやってきます(もう、耳にタコができるほど聞かされたことですね)。では、

 

・その時、自分やまわりがどうなっていたらOKですか?

 

 あまり重すぎる課題を前にすると、思考が停止する、と言われています。12年後のことなど、今は考えられないし考えたくもない、と言う人もいるかもしれない。でも、ランチをいただきながら私がドッキリしたように、時にはグローバルな視点で自分の足元と将来を見てみては?その時、自分や自分の職業が社会やクライアントから必要とされ、そのことによって活き活きとしているために。

 

 専門性の重要性は、言うまでもありません。その上で、基礎力を上げていく。基礎力の代表指標が「(自分や人との)コミュニケーションスキル」です。基礎力を身につけるには時間がかかりますが、将来のリーダーシップ力につながるものです。

 

 

 数ヶ月前、日本の民間病院の優れた医療サービスが高い評価を得て、本格的な海外進出を検討している、とメディアで取り上げられていました。もちろん、そのサービスの中にはリハビリテーションも含まれています。時代は、そこまで来ている、ということです。

1 件のコメント:

  1. 昨日更新したブログで外国人介護職について触れたが、今日にって平成25年3月の介護福祉士の合格率を知った。
    介護福祉士試験全体の合格率は64・4%。
    インドネシア人とフィリピン人の介護福祉士候補者322人が介護福祉士国家試験を受験し、128人が合格。
    合格率は39・8%で、昨年(37・9%)より1・9ポイント増。やはり、言葉の壁が高い。試験時間を延長し試験問題の
    表現を平易にするなど、様々な配慮がされているとのことだった。

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